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読書感想文:「世界中の愛を全部ください」&「もう学校には行けない」

読書感想文
 
乳児院と施設の観念が染み込んでいる里子の、里親家庭と学校への適応の難しさ

 関連記事:Books 世界中の愛を全部ください / Books もう学校には行けない











  「世界中の愛を全部ください」

固定された大人との関係よりも子ども集団を気にする癖

 題名で表現されているように、彼女の世界観は知らないわけじゃない。その観念から生じている自己否定と口の悪さ、施設を出て里親家庭へいっても、いまだに指導員や保母に対するのと同じ態度を続け、子ども集団の中での自分の立場ばかりを気にする癖。

 その里子の態度が理解できなくて困惑する里親夫婦。この本での彼女は施設での体験を里親に語りつつも、彼女自身では言語化できない事柄は、学校での実際の行動で語っているように見えた。

 わたしはこの本を読んでいて、5才まで席を置いていた乳児院や養護施設で彼女がどのような集団生活を送っていたか垣間見える気がする。すぐに消える職員である大人には興味も期待もなく、常に子ども集団だけが死活問題の彼女は、里親家庭に行っても集団生活の影響下で生きているように見えた。

「支配と被支配」の発想

 子ども集団とその影響という視点からこの本を読むと、彼女は学校で、集団の中のスケープ・ゴートを選び、幾つかのグループの中のどれかに所属し、そこで実質的な支配権を得て、グループの中心人物である自分を裏切らせない為に、影で他の子の弱みを握り、陰口をばら撒き、周囲の子にかしずかせる事でグループ内での安定を得ようとする。
 
 それは彼女が身を置いていた施設での子ども達のやり口だと考えれば、わたしにはシンプルに話の内容が理解できる気がした。彼女は施設での子ども集団の支配の世界観を、里子になっても、一般社会の学校で再演しているように見えた。

信頼なき裏切り

 彼女が頻繁に口にする「裏切られた」という言葉は、支配と被支配の世界しか知らない彼女としては、この表現が彼女の精一杯の表現。彼女にとっての裏切り者というのは、彼女の支配の及ばなくなった相手の事を指す。信頼による裏切りではなく、彼女の支配から逃れる事が裏切りのようだ。

 それとは別に、施設の集団生活の場合、けん制から抜け出す子や、職員と少しでも多く話す子は、それだけで集団を裏切る、裏切り者になる。

 彼女のぐちゃぐちゃ心理がよく出ていると感じるのは、彼女の家に後から入ってきた幼い里子に対する抑えられない嫉妬と怒りの部分。

 【彼女視点では】里親の愛を一身に受けているようにしか見えない年下の里子を苛める事が許されない里親家庭での、彼女の「とぐろ巻きの思念」について、里親夫婦は理解しきれていない。

 もし施設なら、大人から可愛がられる子はみんなでリンチすれば事はすむ筈だったのだと思うが、里親家庭では許されない行動。彼女は、飼い犬にまで怒りをぶつける。

 この時点で彼女は自分を今まで施設に帰さずに関わってくれている里親の覚悟に気付いていない・・・。

 そしてその苛立ちは学校でも・・・。目を合わせない子をちくちく苛める、理由にならない理由で親友とまで言った子にムカつく子のレッテルをはる。

 彼女はまるで児童養護施設の親分肌の女子だ、わたしは、彼女はその気配をぷんぷん匂わせる文章を書いていると感じた。

 「もう学校へは行けない」

 次の巻も基本的には集団にロックオンしている彼女の意識が感じられる。集団から少しでも外れると神経症の様相を呈するなど、彼女はまだ集団の世界を強迫観念のように意識しているように見えるし、そのため、里親子関係の問題にまで心が向いていないように見える。

 様々な理解しがたい態度を示す里子に対して、里親が「お前は私たちを散々振り回しておいて!」と怒る場面があるけれど、彼女は自分が里親を振り回している事に気付いているとは思えない。彼女の関心は今も子ども集団にあり続け、里親の悲しみ、苦しみに気付く心的な余裕もないように思う。
 
 読後感

送信者 Mariaのストリート通信


 わたしは里親さんがたにこの里子さんの生々しい言葉を読んでいただきたいと思う。施設出身者のわたしにとって気持ちのよい文章ではないが、養護施設がどのような世界観なのかが感じられると思う。ぜひお勧めしたい。

 里親家庭へ行くのは、5才では遅すぎると感じさせる本だが、一方で、5才でも養護施設の世界から身を離したからこそ、この生々しさをそのまま体現できたのかもしれないと感じた。

 最後に

 彼女が書いている、学校の交友関係の悩みのように見える事柄を、わたしは養護施設の子ども集団の絡みの延長として捉えたので、彼女の必要以上の過激さと不安の状態が、養護施設の子ども集団の世界を知らない人は何の事か判らないと思う。

 ただわたしがこの本を読み始めた時、彼女の強迫観念的な態度は学校の交友関係の問題に見えなかった。学校の事を彼女は書いているのに、その内容は丸ごと施設での上下関係や、集団関係、職員とのやりとりを再現しているようにしか見えなかったとだけ、告白しておきたい。

 同じ子ども集団でも、学校の集団と施設の集団はその関わり方や影響の度合いは違う。彼女のかもし出す文章は施設時代の匂いがぷんぷんしている。これだけパッケージングされた文章もなかなか見当たらないと感じた。
 
送信者 Mariaのストリート通信


 飾らないストレートな彼女の表現を読む事で、彼女の生きてきた5年が見えてくる。やはり養護施設は子ども同士縛りあう大人無き世界だ。その影響は里親家庭へ行っただけでは修正しづらい。認知の療法などのレベルのように感じた。

| └ 読書中 → 完読 | 17時29分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑














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